kiss of lilyー先生との甘い関係ー

「おこげができてる」

 僕の家のキッチンで、こんなことができるとは思わなかった。 材料だって珍しいものや高級なものや使っているわけじゃない。野菜と卵とそぼろとごはん…新しいものといったらコチュジャンくらいか。

「ありがとう」

「お店を出したらいいと思う」僕がそういうと、ユリはオーバーだよと言って微笑んだ。

 ユリが家にいると、生活の充実が著しい。

 朝起きてコーヒーを飲むときも、新聞を読むときも、今まではエネルギー摂取くらいにしか考えていなかった食事の時間もなんだか楽しい。モノトーンの家がいつもより明るく見える。中学生ではあるまいし、隣りにいるだけで胸が弾んで緊張するわけではないけれど…

 そうだな、例えると40°の高熱が出たというより基礎体温が37°に上がったような、そんな感じか。

「…」

 恋人との生活を体温に例えるのは、もしかしたら適切ではないかもしれない。

「どうしたの?」

 僕がスプーンを持ったまま止まっていたら、ユリが不思議そうな顔をした。

「いや…僕はロマンチストではないらしいと思っただけだ」

 彼女はなにそれ、と言って笑った。それには発熱作用がある。もしかしたら40°の方かもしれない。


・・・