あの日から誠の授業が始まるまでの半月のお休みは、彼と彼の家で自堕落に過ごした。

 年末年始にある世間の一大イベントからは背を向けて、ふたりでベッドでごろごろ日向ぼっこしたり、ピザを頼んで映画を観たり、毛布をかぶったままチェスをしたり。

 当初お邪魔したときは泊まる予定なんてまったくなかったのに、幸せに引き留められて一回も家に帰らずにここに滞在していた。彼の家は、旅行に来たみたいにわくわくする場所であると同時に、癒しの場でもあった。すぐに最も好きな所になった。

 誠に関してはこういうことが多い。

 彼の研究室もすぐに慣れてなじみ深い場所になったし、名前を呼ぶことにしても、まるで出会った当初からそう呼んでいたみたいに自然に名前で呼び捨てにできた。”呼び方移行選手権”なんてものがあったら、スムーズ大賞でも取れるんじゃないかしら。

 同様にわたしのことを、名字かつ君づけで呼んでいた彼も、わたしのことをすんなり”ユリ”と呼ぶようになった(もっとも彼はわたしに対し”きみ”という二人称を多発していたけど)。

 さすがにクリスマスは要望がないかと聞かれたけれど、何もしなくていいからただ一緒にいたいと言った。それにシャンパンやワインが常備されていてイルミネーションが一望できる誠の家は、充分すぎるほどクリスマスの夜を過ごすのにふさわしかった。

 しかし、何もいらないと言ったにも関わらず、彼はクリスマスの朝にベッドに腰掛けて、寝起きのわたしにハートのペンダントをくれた。長く使えそうなピンクゴールドの18金。