「ダメだ。ソイツは再起不能にしてやらなきゃ気がすまねぇ。いちいち俺のカンに障るんだよ。弱いくせに生意気そうな目も。分かってる風なクチの叩き方も――」
 
 
小宮から手を放して立ち上がり、勇気を振り絞ってイツキに足を向ける。
 
 
「それは、小宮が分かってるからだよ」
 
  
「っ! 比奈さん、危ないから下がってて!」 
 
「ヤだ」
 
 
ごめんね、小宮。あたしを心配してくれるのは嬉しいけど。
 
後ろから腕を引く、小宮の手を振り払って前に出た。
 
 
「……何をだよ」
 
 
あたしを睨むイツキの険しい目を、真正面に受けて立つ。
  
 
あたし、今までちゃんと見てなかった。イツキのこと。
 
大事な友達なのに。イツキの痛みを分かってなかった。 
 
 
ごめん、イツキ。
 
あたし、バカで、鈍感で、イツキを止める力もないけど――
 
 
 
「自分の言葉に、イツキが一番痛がってるってこと」 
 
守りたい。
 
 
「っ! ……比奈。つまんねぇこと言ったらいくらお前でも殴るぞ! そこをどけっ!」
 
「どかない! 怖くないよ、そんな脅し。だってイツキにはできないって分かってるもん!」
 
 
守りたい。
 
 
二人を――小宮を、イツキを守りたい!