まさか挑発に乗らないよね、とゆっくり身を起こす小宮に目をやると、何故か負けじと不敵な笑みを浮かべてる小宮。
 
 
「比奈さんはモノじゃないし……笑えるね……。そんなに悪ぶってみせてもちっとも似合ってないよ……。僕らはまだ、高校生の……ガキ、だからね」
 
 
なっ、なに言ってんの小宮っ!?
 
  
「っ! バカにしてんのかてめぇっ!」
 
 
怒りのあまり顔面蒼白になったイツキが小宮の胸に掴みかかる。
 
あたしが止める暇もない。
 
 
一発頬を殴った後、小宮の肩を掴んでお腹に膝蹴りを入れる。
 
くぐもった声と共に背中を丸め、ずるっともたれて崩れ落ちる小宮を危険な目で見下ろすイツキ。
 
 
一瞬のことだった。
 
 
あたしはただ声を失って、立ち尽くすことしかできなかった。
 
 
ダメ。やだ。しっかりして小宮――
 
震える足を一歩出したその時。
 
 
上体を起こそうとするイツキの首がガクッと下がった。
 
 
「っ!?」
 
  
驚きに目を見開くイツキの首は、ピンと張られたタイに固定されている。
 
その先を掴んでるのは――
 
 
 
バキッ!
 
 
 
次の瞬間。
 
 
  
真っ直ぐに突き上げた小宮の拳がイツキの顎を叩き上げた。