「っ!」
 
 
まさかかわされるとは思ってなかったんだろう。
 
イツキの顔が驚きに変わる。
 
でもそれも一瞬のことで、すぐに気を持ち直したイツキの反対の拳が小宮の頬を打った。
 
 
「小宮っ!」
 
 
入りは浅かったけど、イツキのパンチは強烈だ。 
 
たまらずよろめいて膝を折る小宮。メガネがカランと地面に落ちた。
  
 
「大……丈夫……。平気だから……」
 
 
顔を覗きこもうとするあたしを手で制しながら、小宮は荒く息をついた。
 
そんなこと言ってもすごい汗。無茶だよ小宮……。
 
 
「へぇ……咄嗟に身を引くたぁ、少しはやるようになったじゃねぇか。鍛えた甲斐があったな」
 
 
小宮を見下し、ニヤリと哂うイツキ。
 
 
「……じゃあこういうのはどうだ? 俺を一発でも殴れたら比奈を連れて帰らせてやるよ。敢闘賞ってヤツだ」
 
 
なっ――
 
 
不敵な態度で言うイツキをあたしはキッと睨みあげた。
  
小宮がまだ空手始めたばかりなのを分かって言ってる、あれは。
 
どうしてそこまで――