「あいたたぁ~~。みっともなぁ~~」
 
笑うしかないってな顔でお尻をさする女子。本を拾い集めた小宮が、
 
「この階段、危ないね。滑り止め欠けてて。修理してもらえないか先生にきいてみるよ」
 
と彼女を気遣いながら言う。
 
それを聞き、顔を上げた女子は小宮に気付いてハッとなった。小宮の顔にじぃーっと見入りながら、
 
「あ……どうもありがと……です」
 
ポーッとした様子で答える。なんだか嫌な予感。
 
「怪我はない? 一人で立てる?」
 
「えっと、あ、足、挫いちゃったかも……」
 
「じゃあ保健室に行った方がいいね。僕でよければ手を貸すけど……女の子の方がいいよね。比奈さ――」
 
「どうもすみません! 是非、手を貸してください!」
 
その女子は、言葉を遮るようにガシッと小宮の腕を掴んだ。マテマテマテ。
 
「わっ! ちょっ……ゆ、ゆっくり立ってね……」
 
 
愛想笑いで応じるなぁぁ! 
 
しかも、顔を赤らめながら。少し困った風にではあるけどぉ~!
 
 
分かってる。小宮が赤くなるのはいつものこと。女の子に触られるとそうなるんだもん。仕方ない。
 
 
仕方ない、って分かってるけど……。
 
 
「あ、あたしも保健室、一緒に行くよ!」
 
 
気付けばその子の腕を掴んでそんなコトを口走ってたあたし。
 
ダメだ。やっぱりガマンできない!
 
最近、油断ならないよ小宮ぁ~! 女の子の視線集めてるって自覚ないの!?
 
 
あからさまに迷惑そうな女子の視線を気付かないフリして付き添いながら。
 
 
小宮の成長を素直に喜べない自分に自己嫌悪……のあたしだった。