「比奈さん、どうしたの? 苦しそうだよ」
 
電信柱に抱きつくあたしを、心配そうに覗き込んでくる小宮。
 
 
ひえっ。バクバクが更に大きくなった!
 
だ、だめっ。近寄んないで小宮!
 
 
「なんか……息が苦しくて……フラフラしてきた……。あたし、早死にするかも……」
 
逃げるようにずれながら力のない声で言うと、
 
 
「ええっ!? だっ、大丈夫っ!? 風邪かな!? そこの薬屋さんで何かお薬買って行こう!」
 
顔色を変えてオロオロしだす小宮。
 
 
「高血圧に効く薬、売ってるかなぁ……?」
 
これが遺言になったらイヤだなぁ、と思いつつ呟くと、
 
 
「僕、血圧計買ってくるっ!」
 
 
途端、小宮は大慌てで薬屋さんにすっ飛んでいった。
 
 
 
なんで血圧計なのかよく分かんないけど、ありがとう小宮。
 
でもあたし、もうダメかもしんない……。
 
小宮の優しさはあの世に行っても忘れないから……。
 
 
 
しかし数分後。気付けば胸の息苦しさはすっかり収まってて。
 
あれ? 大丈夫じゃん。と我に返ったところにすごすごと戻ってくる小宮。
 
がっくりうなだれて言うことには。
 
 
「どうぞ病院にお行きください」と冷たく店員さんにあしらわれたんだとか。