ああんっ。もう終わりかぁ~。
 
もっと見ていたかったのに残念。
 
大きな体の人が大きな声を出すと、全員キレイにピタッと動きを止めた。
 
それから今度は道場の端っこに一列に集まり、畳の上を順々に転がりだす部員達。片腕を前に伸ばして、ジャンプしながら前転する。
 
何の練習だかさっぱり分からない。ローリングなんちゃらって必殺技でもあんのかな?
 
道場の端っこの四辺をなぞるように前転する部員達は、あたしの目の前を次々と転がっていった。 
 
その際、好奇心剥き出しの眼を向けられたりして、ちょっと居心地悪い。
 
黙って見てると、小宮の番になった。
 
他の部員達より全然不恰好だけど、一生懸命転がってる小宮。ちょっと可愛い。
 
頑張れ小宮!
 
気付けば心の中で応援しながら片膝を乗り出していた。
 
それは、丁度こっちに転がってきた小宮がばっちり目の前にくる位置で。
 
起き上がった小宮がふとこちらを見た瞬間、しっかりと目が合った。
 
 
「えっ……ひ、比奈さんっ!?」
 
 
次の瞬間、ぎょっとして固まる小宮。
 
 
あ。止まっちゃダメだって、小宮。後ろからまだ転がってくる人が……。
 
 
ばこんっ
 
 
ハイ、お約束~。
 
 
後ろから前転してきた人の足に蹴られて、畳に突っ伏す小宮。
 
 
その後、主将さんにしこたま叱られたのだった。