「あん? お楽しみ中だったか、もしかして?」
 
「ナニ言ってんのイツキ。一緒にお昼食べてただけだよ」
 
「そっかそっか。ワリィな、小宮クン。お邪魔しちゃってよ」
 
「い、いえ、別に……」
  
萎縮しながら答える小宮。
  
「大丈夫? また傷が痛んできた?」
 
あたしは小宮の顔を覗き込んで訊いた。
 
様子がおかしい。
 
「具合でも悪くなった? 一緒に保健室行こうか? ごめんイツキ、話はまた後で……」
 
 
「ぼっ、僕なら大丈夫だから、比奈さんっ!」 
 
 
「えっ?」
 
 
突然立ち上がる小宮。
 
ビックリした。
 
 
「僕、もう教室に戻るよ」
 
 
下を向いたままあたしを見もせずくるりと背を向ける。
 
なに? いきなりどうしたの?
 
イツキが薄っすら笑いながらその背中を見送る。 
 
 
「あーらら。つめてぇな、お前のトモダチ」
 
「今日はちょっといつもの小宮じゃないみたい」 
 
いつもの小宮はあんな素っ気ない態度なんてとらない。
 
ホントにどうしちゃったんだろ。
 
 
小宮が校舎の中に消えてった後、あたしに向き直るイツキ。
  
「それより比奈、週末のイベント、面白いのやるんだぜ今週。お前もこいよ」
 
 
イツキの話ってのは、どうやらクラブへのお誘いらしい。
 
それは楽しそうな話なんだけど……。
 
 
「ごめん。まだお店の手伝いやんなきゃいけないから。夜は遊べないよ」
 
 
あたしは肩をすくめて謝った。
 
 
なかなか新しいバイト、決まらないんだよね。