「咄嗟だったから……」
 
「咄嗟でも凄いよ! 自分から触れたじゃん!」
 
 
あたしは身を起こして小宮の手をぎゅっと握った。
 
小宮は少し赤くなったものの、前みたいに固まることはなかった。
 
  
「慣れてきてるんだよ、確実に! ガチガチ症を克服してきてるんだよ!」
 
「そうなのかな……?」
 
「うん! きっと、あとちょっとだよ! あとちょっとで普通の男の子並みになれるよ!」
 
 
興奮して飛び上がりそうになった。
 
 
小宮があたしに触れるようになる!
 
小宮からのキスも夢じゃない!
 
 
嬉しくて嬉しくて、空に舞い上がりそうだった。
 
 
 
「ありがとう。比奈さんのおかげだね」
 
「いいのいいの。お礼は最後までとっといてよ。ちゃんとエッチできるようになるまで付き合うから、ネ?」
 
 
自分でも信じられないくらいテンションが上がってて。
 
 
この時、あたしは気付けなかった。
 
 
小宮の表情が一瞬曇ったことに。
 
 
 
「エッチできる日も近いね、きっと! そしたらお祝いしようね! 大きいケーキとか買ってさ!」
 
「うん……そうだね……」
 
「うわぁ~~っ! 超楽しみぃ~~っ!」
 
 
小宮の手をぶんぶん振って、浮かれまくったこの日。
 
 
きっと明日からはもっと深い仲になれる。
 
小宮と気持ちいいことができる。
 
 
そう信じて疑わなかった。
 
 
 
 
まさか――思いもよらなかったんだ。
 
 
 
 
小宮が、あんなことになるなんて。