「ちょっと髪も整えてみようよ! ムースとか使ってさ~。あたしがスタイリングしたげる!」
 
 
起き上がって、鏡台に駆け寄った。
 
 
きっとスタイリングすると、すっごくカッコ良くなる!
  
 
ウキウキしながらムース缶とコームを手に取って振り返ると――
 
 
 
あ。
 
 
「あ、あはは。それはまた今度お願いするよ」
 
 
 
引き攣り笑いを浮かべた小宮が、服を整え、鞄を抱きかかえて立っていた。
 
 
 
ああああああああ!! あたしってばせっかくのチャンスをぉぉぉ~~~!!
 
 
 
「待って小宮! せめて髪いじらせてぇ~~!」
 
「じゃあ比奈さん、僕、もう帰るから。また明日~~~っ!」
 
 
脱兎の如くの素早さで、部屋を走り去ってく小宮。
 
ちゃっかりメガネも消えている。
 
追いかけようとしたけど、何故か足がふらついてうまく立てない。
 
床に膝をつきながら、虚空に手を伸ばした。
 
 
 
「ごめん! もうやんないから! ネ! あぁ~~んコミヤぁ~~~! 行かないでぇ~~~~!!」
 
 
 
 
 
 
 
超がっくり。