「ジョッキビール6!」
 
「はーい!」
 
「トマトサラダとフルーツ盛り合わせ!」
 
「はーい!」
 
 
次々とやってくる注文に、キッチンはてんやわんや。
 
あたしともう一人のキッチン担当の青年は、絶えずせかせかと動いてた。
 
煌びやかな店のホールの奥はまさに戦場。ステンレス製の作業台は、始終モノで溢れかえってるのだ。
 
これぞ裏側ってカンジ。
 
 
「ビールは私がやるわ」
 
 
華やかな深紅と黒のスーツに身を包んだママが、不釣合いな戦場にやってきた。
 
オーナーであるママが直々に手伝うほどにこの店は繁盛してる。
 
それっていいことなんだけど、もう少しお客さん少なくてもいいのに、なーんてね。