恋湖side


-新学期当日-

「おはよー恋湖!」

「おっはよー!」


校門の前で待ち合わせしていた中学校からの親友、星南。
なんでも話し合えて、私がゆう兄のことが好きだってことも知っている。


「新学期だね!
あー、また勉強かー」

「もう、星南ってそればっかり!」


いつも通り笑いながら学校の中へ入る。
幸い、今年も星南とクラスが一緒だった。


「あたし達ってさ、やっぱり運命?」

「かもね!」


きっと今年も楽しい1年になるんだろうなぁ!星南がいるし!
…ゆう兄のことは今は忘れよう。

そう思いながら教室に入ると、みんなの様子がおかしかった。

ん…?どうしたんだろう?


「ねね、どうかしたの?」


同じクラスの子に、星南が事情を聞く。


「り、淕が学校来てて…しかもここのクラスなんだよね…」

「え!?
あの不良で有名な如月淕!?」


如月…淕?

私の頭には大きなハテナマークが浮かんだ。


「ねぇ星南、如月淕って誰?」

「え!?
恋湖知らないの!?」

「知らないよ?」

「まったく、祐輔さん以外の男にほんとに興味ないんだから!」


…それは否定できません。

星南の説明によると、如月淕はこの高校に入学した時からの問題児だったらしく、他校にも有名なくらいの不良らしい。
1年の秋から学校に来なくなってみんな退学したと思っていたけど、まだ在学していて、しかもこのクラスになったからみんな動揺しているらしい。

どんな人か知らないから私は怖くないけど…
みんなが動揺するくらいだから相当なのかな…

そんなことを思いながら決められている席へ着いた。
私の前には空席がある。

もしかしてここの席なのかな?


「みんな席着いたかー?」


そう思っていたら、担任の先生が来て朝のホームルームが始まった。











「それじゃ、みんな体育館へ移動だー」


入学式があるから、みんな一斉に体育館へと向かう。


「あれ?
恋湖どうかしたの?」

「星南…と、トイレ!」

「まったくもう…
早く行っておいで!
先体育館行ってるよー?」

「わかった!」


ダッシュでトイレへと向かう。


「はー!スッキリした!」


トイレから出て体育館へ向かっている時、教室に人影があった。

あれ…?
私達のクラスだ…

カーテンに隠れて顔は見えない。

さっきみんな体育館に行ったよね…?

そっと教室に入る。


「あのー…」

「……」


返事はない。
風に揺れたカーテンから、ちらっと髪の毛が見えた。

き、金髪!?
もしかして…如月淕?

少し近づいてみる。


「あのー?」

「……」


また返事がない。

も、もしかして寝てるのかな?

そっとカーテンを捲ってみると、案の定金髪の男の子が寝ていた。
とても無防備にスヤスヤ寝ている彼。
もしこの人が噂の如月淕だとしたら、悪そうな人には見えない。
そう思っていると、彼が体制を崩してイスから落ちそうになった。


「危ない!」


咄嗟に彼を庇う。

ドンッ


「いったー…」


思いっきり背中を打った。
彼は私の上でまだスヤスヤ寝ている。

嘘!?
まだ寝てる!?
痛いし重いし入学式始まっちゃうし…!
どうしよう…!


「ん…」


そう思っていた時、彼が眠たそうに起き上がった。


「ふぁぁ…」

「……」


まだ私が下にいることに気づいていない彼。
自然と言葉は失われた。