『…櫻井』

大好きなあの人がいた。少し不機嫌そうな顔を浮かべながら。

櫻井「お前も眠れねぇの?」

櫻井はそう私に問いかけながら私の隣に座った。まるで鎌倉探検のときみたいに。

『まあね。あ、今何時?』

櫻井「時計持ってない俺に聞くことかよ…。たぶん1時ぐらい」

『ふぅん、そっか』

櫻井「…」

『…』

またもや沈黙。それは鎌倉探検のときとは違い、バスのときの沈黙と似たようなもの。櫻井が何か言いたそうだが、少し言いづらいことなのかな、さっきからなんも話しかけてこない。

櫻井「…水川」

『え?』

突然出てきた彼氏さんの名前に驚いて櫻井のほうへ顔を向ける。

櫻井「お前さ…水川と付き合ってんだろ」

『…は?』

あまりにもいきなりな質問(?)だったので、私は呆気に取られた。
私の目には櫻井の真剣な表情を浮かべた横顔が映っている。こっちを見ずに、ずっと床を見ていて…少し、寂しく感じた。

櫻井「だから、水川と…」

『なんでそう思ったの?』

最後まで言わせてたまるか。胸がすっげえ痛くなる。こいつの口からこういうことを言ってほしくないだけなんだけど。

櫻井「水川から聞いたんだ。神村と付き合うことになったって、俺だけに言ってきた。たぶん俺に自慢したかったんだろ」

…うん?なぜに櫻井に自慢する必要があるのかね?部外者じゃん?

『へ、へぇ…そうなんだ』

コメントしづらいっす。なんとも言えない。…なんとも言えねぇ…