朝・・・、か。




瞼(まぶた)が重い。

これは絶対昨夜すぐに眠れなかったせいだ・・・


薄目を開ける。


窓から漏れる光が俺の視界をちらつかせた。

眩しい。

「っ・・・」

気だるい体を起こし、俺は少し右へ視線を移す。


《5:28》


こんなもんか・・・。

低い棚の上に置かれたデジタル時計は俺が思っていたよりも少し早い時間を指していた・・・が、


入学式の朝ぐらいゆっくりした方がいいだろう。

ベッドから降り、クローゼットを開け、しまわれていた真新しい制服を手に取る。

まだ誰にも着られていない制服は型がしっかりしていて着にくそうだ。


制服を着終えた後、自分がまだ顔を洗っていない事に気付いたため洗面所に行くため、廊下へ出た。


静かだ。恐らく母はまだ寝ているのだろう。

うちの家は父が単身赴任で滅多に家には帰って来ない。


確か前に会ったのは二年ほど前だ。

二、三ヶ月に一度電話をよこすがたいした用件は無く、とりあえず「元気か?」と、それだけだった。

別に興味も無い。


そんなことを考えていると洗面所に着いていた。

顔を洗って歯を磨き蛇口を締める。

顔を上げ、鏡に映った自分の顔を見た。


少し寝癖のついた黒い髪、何処にでもいそうな顔のパーツ、


つまらなそうな表情。


・・・・。




ガチャ。

廊下の方からドアを開いた音がした。

母親が起きたのだろう。


そろそろ朝食作らなきゃな。


そう思い、洗面所を後にして廊下を進み階段を降りる。


「 有樹 」

階段を降りている途中、母親に呼び止められた。

振り向く。

「 似合ってるじゃない。」

母が目を細めて笑った。

「あぁ、。」

適当に返事をして目をそらす。

年々増えていく母の目と口の周りのシワを見ていると、ただどうしようなく寂しい気持ちになる。