君がいるから~雪の降る夜~

なに鍋がいいかなぁ? 両手を胸の前で交差させて、腕をごしごし擦りながら、一生懸命考えてる。

「トマト鍋は?」

振り返った彼女の瞳が、雪にも負けないくらいキラキラ輝く。

「イタリアンだね~」

「トマトはちゃんと湯剥きしてから入れないとダメだよ。皮ごと入れると堅い皮が口に残って、がっかりしちゃうから」

「承知しました」

俺が頷いたときに彼女が浮かべた笑顔は、本当に幸せそうで、見てるこっちまで笑顔になる。もう顔が緩むのが押さえられなかった。

知ってた?
君のその笑顔が見られるだけで、寒さなんて吹っ飛んじゃうんだよ。俺の心は真夏の太陽に照らされたみたいに、溶けちゃうんだ。

「勇気、なに笑ってるの?」

「なんでもない」

「気になるでしょ!」

「なんでもない。あーマジ寒いね?」

「はぐらかそうとしてるでしょ」

顔を見ない俺の心を見透かしている。
でも、もうしばらくは心の奥の奥まで見ないで。

君を愛している。
いつか、そう伝えるから。

「よし、寒いからダッシュしようぜ! ダッシュ!!」

俺は駆け出す。

「あっちょっと! もー待ってずるい!」

慌てて彼女も駆け出す。


今宵はふたりで暖まろう。
降る雪が溶けてしまうくらいに。


END.