屈みこんで白い雪に手を伸ばす。掴んだ瞬間から凍るような冷たさが手のひらに広がったが、それを丸く握り、彼女めがけて投げた。
一発で命中するはずだった雪だまは、予想に反して前を行く彼女の足元に、どさっという音と共に落ちた。

「あ。やべぇ」

まずい。
狙いを外した。

「勇気!」

まずい。
振り返った彼女は物凄い剣幕だ。
防衛反応が働いた俺は、文句を挟む隙を与えず、もう一度雪だまを投げた。

「!」

彼女は慌てて脇に避ける。

「勇気!!」

「なぁ、せっかく降った雪なんだしさ、もっと楽しもうぜ」

なかなか会えなかったことの謝罪も込めて、精一杯、笑ってみせる。

「………」

黙りこんだまま彼女は、心まで見透かすような瞳でしばらく俺を見ていた。その瞳が、すっと細くなる。そして素早く次の行動に出た。
しゃがみこんだ彼女が立ち上がり、手を振りかぶってバシッ!

「おぶっ!!」

俺の顔に、冷たいものが当たった。

「ふふん」

命中させた本人は、腰に手を当てて得意気にのけぞっている。