「あのなー。パンはトースターで焼くのが普通だろ?」
拗ねたように目線をはずす光希を覗きこむ。
『私に普通を要求しても無駄だ。』
「なんでだ?」
『私は小さい頃。ずっと部屋の外に出させてもらえなかった。だから、私は普通を知らない。』
普通じゃないことを平然と言ってのける。
おいおい。まじかよ。
「どういうことだ?」
この質問は上手くかわされた。
『腹減った。ずっと朝飯をまってるんだが?個人的にはピザが食べたい。』
つかめない女。何を言いたいのか。何がしたいのか。何を求めているのか。
全くわからない。
「オムライスでも作るか。」
『私の意見は無視か?まぁいい。グリンピースは抜いてよね。』
「だめだ。」
料理の手を動かしながら、ずっと考えてた。
俺にとって、コイツと生活することは、
もうすでに日常なのかもしれない。
だとしたら、いつかはなくなるもの?
コイツにとってもこの生活は日常か?

