キスの意味

なんだか訳がわからないまま、私は引き継ぎの後、逃げるように経理課へ戻った。


「かえりました」

経理課の部屋に入り、声をかける。

自分のデスクに戻ると

「お疲れ様。どうだった?」

と、尚子さんに声をかけられる。

「っ!」

尚子さんの顔を見て、安心感や疑問、いろんな思いが溢れて、無言で尚子さんを見つめる。

その時の私が、いったいどんな顔をしていたのか自分ではわからないが、勘のいい尚子さんは、何かを感じてくれたようだ。

「わかった。後で話そう」

席を立ち、私の隣まできて肩に手を置き、そう囁いてくれた。

私は小さく頷くと、気持ちを切り替えるように「ハッ!」と息を吐き、経理課最後の仕事を始めた。