キスの意味


展示会は、賑やかだった。家族連れも多く、子どもたちはもらった風船を嬉しそうに握りしめていた。

そこだけ切り取ってきたような、浴室やキッチン、トイレが会場に並ぶ。ちょっと不思議な光景だ。

塚本さんと一通り見て回る。自分の家との違いに、素直に驚いたり、感心したりした。

長机にパイプ椅子が並ぶ、休憩スペースに来た。そこからよく見える所に、無料のコーヒーやジュースを渡しているコーナーがあり、そこに千晶がいる。

塚本さんと二人で近付くと、すぐに千晶は気付きよそ行きの笑顔を浮かべた。

「千晶、来たよ!」

「いらっしゃい!塚本さんもわざわざお越しいただいて、ありがとうございます!」

小首を傾げるようにしてお礼を言った千晶に、塚本さんも穏やかに微笑んだ。

「千晶ちゃん、お疲れ様!今日は声をかけてくれて、ありがとう」

「ゆっくりしていってくださいね!」

千晶から、コーヒー、フライドポテトを受け取ると、休憩スペースに移動する。

チラと千晶の方を見たら、千晶の目が弧を描いて笑った。

「……」

背筋に冷たいものを感じて、私は慌てて目を逸らした。

できるだけ千晶の姿が見えない位置に、塚本さんと並んで座る。