「父は、男の子が欲しくって!」

「うん!」

「大きくなったら、野球をさせて、キャッチボールをするのが、夢だったそうです!」

「うん!」

「でも、生まれたのは、女の子ばかりで・・・」

「・・・」

「できたんですね、キャッチボール!女の子でも!」

塚本さんが、これまでよりも、ずっと高くボールを放り投げる。

私は、グラブを構えたまま見上げ、ボールの落下地点を予測する。

『バシッ!』

「ナイスキャッチ!」

塚本さんが、近付いてくる。

私は、ニッコリ笑って、ボールをグラブに収めたまま、塚本さんに渡す。