もちろん、私はそんな仕事をしていない。

しかし、塚本さんの誠実な人柄のせいか、その言葉から妙な説得力を感じた。

いや、それだけじゃない強さも感じて、私、どんなミスをしたんだろう・・・と、一瞬不安になってしまった。

大きな声で話している訳でもないのに、塚本さんの声が、部屋中に響いているようで。それをみんなが、ジッと耳を澄まして聞いているようだった。

みんなが聞き入るような事は、言っていないんだけど。

すでに戦意喪失?していた大橋部長は、塚本さんが「迎えに来た」といった時点で「わかった」と短く答えていた。

それでも、事情を説明する塚本さんの話を聞いているうちに、段々表情が戻ってきていた。

最後に、塚本さんは

「日頃からたくさんの部下を育てている大橋部長なら、ご理解いただけると思っていました。大橋部長の下で働ける方達は、幸せですね」

と言って、極上の笑みを浮かべた。微笑まれた大橋部長は、蒼白だった顔色が、サッと赤くなった。

つっ、塚本さんの微笑みは、男女問わずおとしてしまうのか・・・

「仕事、がんばれよ!」と肩を叩かれて、私は、大橋部長のそばを離れた。