金曜日、自宅に帰ると、父が作ってくれていた牛丼を食べた。本人は、飲みに行っていて、いなかったけど。

普段は、私が夕食を作るのだが、忙しくなって帰りが遅くなりはじめると、こうして作ってくれる事が増えた。

そんな日は、短いメールが届く。
『飯、作った』と・・・『ありがと』と、私も短く返す。助かります。

夕食が終わったら、お風呂に入った。上がったら、簡単にスキンケアし、髪を乾かす。

そして、ケータイを握りしめ、ベッドに腰掛けた。真尋の番号に発信する。

『もしもし』

その声を聞いただけで、涙がジワッと溢れる。いかんいかん、冷静に・・・

「真尋、私、もう限界・・・」

電話やメールで話していたけど、飲み会の事から、もう一度話した。

私の“ キスの記憶 ”の事も、もちろん話した。唇をはむはむされた事とかも、今回は話した。

そして、その事を塚本さんに確認し、否定も肯定もされなかった事も・・・

真尋は、相槌を打つだけで、ずっと静かに訊いてくれた。

話し終わって、長い溜め息を吐いた。

『で・・・』

「うん」