塚本さんが、いつもの穏やかな笑みを浮かべた。私が来るのを、待ってくれるようだ。

塚本さんの前に立つと「すみませんでした!」と、身体を半分に折って、頭を下げた。

「ん?」

塚本さんの柔らかい問いに、頭を上げる。塚本さんの顔を見る勇気がなくて、視線は、塚本さんの大きな靴を見たまま。

「土曜日は、千晶と2人、ほんと~にご迷惑をおかけしました。塚本さん、すみませんでした!」

もう一度、頭を下げる。今回は、スッと頭を上げると、細長いペーパーバッグを両手に持ち、塚本さんに差し出す。

「千晶と私からの、お詫びと感謝の気持ちです。受け取ってください!」

「水野君」「はい!」視線を下ろしたまま、返事をする。

「水野君」

さらに柔らかく名前を呼ばれ、視線を上げるように言われているような気がした。

少し俯いていた顔を上げ、今日、初めて塚本さんと目を合わせる。

小学校の時の担任の先生に「人と話す時は相手の目を見るように」と言われ続け、すっかりその癖がついていた。

大人になり、社会人になり、あえて目を見ずに話す時もあると知った。