翌、月曜日。
私は、いつもより15分ほど早く自宅を出た。

塚本さんに、ネクタイをどうやって渡そうかを考えて、朝、駐車場で渡す事にした。

社内で、みんなの前では渡したくない。『なぜ?』と訊かれたら、自分の大失態の話をする事になる。清水さんと、林さんからの視線も怖い。

塚本さんと私は、いつも同じような出勤時間になる。だったら、早目に来て駐車場で待ち伏せすれば、人目につかず渡す事ができる!そう思ったのだ。

運転席にいるままだと、目立つような気がして、後ろの座席に移動する。幸い、私の駐車スペースからは、駐車場の出入口も、塚本さんの駐車スペースもよく見える。

『待ち伏せ』している事に、ちょっとドキドキしながら、運転席と助手席の間から、駐車場の出入口を見つめていた。

来た!待ち伏せして、5分くらい経った頃、塚本さんの黒のミニバンが、駐車場に入ってきた。

ネクタイの入ったペーパーバッグの紐を、しっかり握り直し、車を出た。

「おはようございます!」

小走りで、塚本さんに近付く。

「おはよう!」