千晶の声が弾んでいるのがわかる。プライベートでは“ 沙映ちゃん ”と呼ぶ高野主任が、“ 水野君 ”になっちゃってるし。それだけ、驚かせたんだろう。

「「吐いて楽になったら、眠くなっちゃたみたいで。何とか起こそうとしたけど、ダメでした」て、つかもんが言って」

「う"ぅっ」

「みんなで沙映の顔を見てみたら、平和な顔して寝てるし。つかもん、すごく大事そうに抱えて来たんだよ」

「あ"ぁ～」

どうしよう・・・“ あの事 ”だけでも、いっぱいいっぱいなのに、お姫様抱っこなんて・・・思い出して、カッ！全身が熱くなる。

「沙映、耳まで真っ赤だよ。妄想した？」

「もっ、妄想じゃないもん！・・・いや、妄想・・・なのかな・・・？」

顔を覆っていた手を外して抗議しようとしたが、しきれなかった。私の曖昧な態度に、千晶は何かを感じたらしい。

「何？お姫様抱っこ以外にも、何かあった!?」

「えっ!?うん・・・そのぅ・・・」

私は、自分の記憶の中にある“ あの事 ”―塚本さんに、トイレでキスされた事を話した。