「あの時は、一瞬酔いが覚めるかと思った」

お味噌汁を啜って、千晶が言った。

「何?」

私、まだ何かやらかしてた!?

「店を出る前だったかな。「気持ち悪い」って言ってトイレに行った沙映とつかもんが、なかなか帰って来なくて。大丈夫かな~って心配してたら・・・」

不安な気持ちで、千晶の続きの言葉を待つ。いつの間にか“ つかもん ”になっていたけど、この際、それはどうでもいい。千晶は、私を見つめて、また唇できれいな弧を描いて笑う。ヤ~ン、怖~い!!

「つかもんが、沙映の事、“ お姫様抱っこ ”して帰って来たの!」

「ひぇっ!?」

予想外の言葉に、変な声が出た。

「マッ、マジ!?」「マジ!」「お姫様抱っこ?」「お姫様抱っこ!」

嬉しそうに答える千晶。私は、両手で顔を覆って深い溜め息を吐いた。

きっとそれは、“ あの事 ”の後だろう。私の記憶だと、私は“ あの事 ”の後、耐えられなくて、意識をなくしたというか、眠りの世界に逃避したというか・・・

「つかもんが戻って来た時は、みんな、ポカンとして見ちゃって。最初に我にかえった高野さんが「どうした?水野君、大丈夫か?」て、声をかけたの」