キスの意味

千晶の唇は、きれいな弧を描いて笑う。ヒエッ!何だ?その企んでいそうな笑顔は!

私は思いっきり眉間にしわを寄せ、首を小さく横に振る。お願いだから、塚本さんに
何も言わないでね!

千晶は、わかってる!とでも言うように小刻みに頷く。でも、やっぱりその笑顔・・・もう、悪い予感しかしないんですけど!

私の感じた『悪い予感』は、間違っていなかった。もしかしたら、そっちに気を取られ過ぎたのが、よくなかったのかもしれないけど・・・


―暖簾をくぐって入った今日のお店は、純和風なお店。私が勝手にイメージする“ 小料理屋さん ”て感じ。本物の“ 小料理屋さん ”に行った事がないので、あくまで私のイメージだけど。

「料理とかお酒とか、何かリクエストはある?」と高野主任に訊かれ、千晶に訊いたら「おいしいお魚!」という答えが返ってきた。

もともと、お肉をガッツリ食べる方ではない千晶。それでも、何の迷いもなく『魚』なんて、相当疲れているなと感じた。

お店の人に案内された座敷のテーブルには、高野主任と津村主任が座っていた。

「なんだあ、塚本。先に会っちゃったのか!」