１０月も半ばを過ぎると、どんどん仕事が忙しくなった。

先月は、村瀬さんがかなり仕事を片付けてくれていたので、請求書の準備などは、初めての仕事となる。

丸岡さんを筆頭に、一課のみんなに助けてもらいながらの仕事となってしまった。

でも忙しいのは、正直ありがたかった。余計な事を考えなくて済むから・・・

塚本さんは、相変わらず優しい。いつもさりげなくフォローをしてくれる。あの穏やかな笑みを浮かべながら・・・

ただ、野球大会以降『甘い攻撃』をされる事はない。そういうシチュエーションがなかったからだけなのか、もうする気がなくなったからなのかは、私にはわからない。

藤田さんと尚子さんの事も気になったけど、「どう？」とも訊きづらいし、経理課の尚子さんも、今の時期は忙しい。

『遠距離』と言うほど離れていないにしても、常に多忙な藤田さんが、仕事帰りに気楽に寄れる距離にいる２人でもない。

仕事が落ち着いたら、尚子さんを飲みにでも誘って、さりげなく様子を探ってみるか・・・なんて考えていた。

そうだ。動きがあった事といえば・・・

宮前さんと、休憩室で一緒になった時。
休憩室の出入り口を確認した後、少し声のトーンを落として、話し始めた宮前さん。