「『私なんか』なんて、もう言うな。お前は自分で思っているより、ずっといい女だ。・・・まっ、俺にとっての一番は、尚だけどな!」

そう言って、頬を緩めた藤田さん。はいはい、よ~くわかってますから。

「誰の事をどう思うかは、俺達の自由だ。お前が決める事じゃない。少なくとも
・・・塚本は沙映の前では、いつもと違う表情(かお)を見せる。それは、何でだろうな?」

また「ニッ」と、笑った。

そうなのかな?塚本さんが意地悪な顔をして笑うのは、私にだけ・・・?それは、何か特別な意味があるの?『恋愛対象外だから』なんて事ではなくて・・・

でも・・・

『でも、塚本さんは白石さんと付き合っているんです』

藤田さんに言えない言葉を飲み込んで、私は、藤田さんから目を逸らした。

「沙映の百面相は、やっぱりおもしろいな」

藤田さんは、ポンポンと私の頭を軽く叩いた。思わず藤田さんを見ると、とても優しい瞳をして、微笑んでいた。

「そっ、そういうの、女の子がみんな喜ぶと思ったら、大間違いですからね!」

再び目を逸らしながら、少し唇を尖らして、藤田さんに言う。