私達が卒業した高校も、この市内にある。3年間通ったこの街は、私にも馴染みのある場所だ。

待ち合わせの場所は、真尋のお気に入りのカフェだ。“ 夜の居酒屋 ” じゃないのが、ちょっとだけ残念だけど・・・

賑やかな通りから、少し入った住宅街の中にあるそのカフェは、『隠れ家的なお店』として人気がある。

わかりにくい場所にあるから『隠れ家』なのだろう。それは、方向音痴の私が『なかなか辿り着けない場所』だという事にもなる。

ケイタイの地図を開き、真尋のわかりやすい(と、その時は思った)説明を聞いた。

念のため、早めに自宅を出たつもりだったのに、迷った私は、『隠れ家』カフェに、待ち合わせの時間から10分近く遅れて到着した。

絶対、バカにされる・・・カフェの店員さんに案内されながら、私は覚悟を決めた。

「遅くなって、ごめんっ!」

両手を顔の前で合わせ、思いっきり眉尻を下げて謝る。そーっと、2人の顔を見る。

「「結構、早かったじゃん」」

それだけ言うと、さっさとメニューの方に視線を戻してしまった。

塚本さんといい、真尋・千晶といい、私以上に私の方向音痴を解っていると思った。

オーダーを終えた後、知っている事も含めて、お互いの近況を話した。