私が居たたまれない気持ちでいたら、塚本さんが私の顔を覗き込みながら言う。

「水野君、酒、飲んだ?」

「ヘッ!?」

思わぬ言葉に、変な声が出る。

「飲んでないですよ。みなさんの事、送るんですから。塚本さんの事も、ちゃんと自宅までお送り致します!」

舞い上がっている自分をごまかすように、少しおどけながら言う。右手を額に当て『敬礼』のポーズで顔を上げたら、予想外の近さで塚本さんと目が合ってしまった・・・

「っっ!!・・・」

目を逸らしたいのに、逸らせない・・・いつも塚本さんは、いとも簡単に私の視線を捕まえてしまう。

ドキドキドキドキ・・・私の加速した心臓の音が、頭の中、身体中に、響いている。

「水野君、なんで顔が赤いの?」

塚本さんが右手を上げ、私の左頬に近付いてくる。もう少しで触れてしまう・・・という時・・・

「失礼します。お待たせしました!」

出入り口の襖が、勢いよく開いた。

「はーい!」

金縛りが解けたように、身体が動く。頭をそちらに大きく動かし、またもや元気に返事をした。

よっ、よかった・・・これ以上は、心臓がもたない!・・・

私は心の中で、大きく息を吐いた。