塚本さんと向かい合って、掌を上にして右手を差し出す。塚本さんは、私の掌を、親指で押してくれる。

「尚子さんって、藤田さんの『彼女のふり』をしてますよね?」

「ああ、そうだな・・・いつ頃からか、そうなってたな」

「2人ともフリーなのに、何で本当に付き合わないんでしょう?」

塚本さんは、キョトンとして私を見る。

「そんな事、考えた事もなかった・・・」

まっ、塚本さんはそうでしょう・・・

「すごくいい雰囲気なのに・・・」

「高校の後輩だって事で、小竹君が入社した時から、藤田さん、可愛がってたし、小竹君もよくなついていたし」

絶対にそれだけじゃないと思う。だいたい『彼女のふり』なんて、全然全く何とも思っていないか、逆に好意を持っているような相手じゃないと、引き受けないよ。いくらカッコよくても、私、藤田さんは無理!だって、怖いもん!私だったら、塚本さんとか・・・

そんな事を一人で考えていて、ハッ!となる。

なっ、何を考えてるのよ~~!?

俯くと、私の手をマッサージしている塚本さんの手が目に入る。手首から肘の間を親指で押し、時折、擦ってくれる。