キスの意味

ただ芝生広場から、多目的広場への移動中に聞こえた会話で、私の思い違いに一つ気付く。

「雪乃ちゃん、残念だったね」

高野主任の言葉に、眉尻を下げ、本当に残念そうに白石さんは頷いた。

「1点差まで追い付いたのに、負けてしまって悔しいです」

Bゾーンの第一試合、主催者のチームが試合をしていて、白石さんはその応援に行っていたようだ。

塚本さんと、一緒じゃなかったんだ・・・

その事に、どことなくホッとしている自分に気付く。

ブンブンと慌てて首を振る。

私には、関係ない!・・・もんね・・・

「どうした、沙映?」

私の不審な行動に、尚子さんが反応する。

「いや、何でもないです!ていうか、応援に来てくれる人がいるんだね~」

「だねぇ」

無理矢理ごまかしたから、敬語になっちゃった。とりあえず、違う話をふってみたら、尚子さんは苦笑しながら答える。

「去年も今年も、だいたいいつもなんだけど・・・藤田さんがあんなだから、塚本さんが一人で相手をする感じになっちゃうんだよね」

うん、目に見えるようだ。

「でも、みんなよく知ってるね。野球大会があるって事!」