そんな大きな声ではなかったはずなのに、白石さんが塚本さんを呼ぶ声は、はっきりと私の耳に届いた。

私は、弾かれたようにその場を離れる。

下の駐車場を目指して、脇目もふらずに走った。

身体は、カッと熱いのに、指先が冷たい。

野球チームの練習の時に、私も一緒に軽く身体を動かしているから、運動不足という訳ではない。

全力で走っていても、ちゃんと足は動いている。下りにもついていっている。

なのに、私の身体が心許ない。
胸が、苦しい・・・


どのくらいそうしていたのか・・・?

ずいぶん長い時間だったようにも感じるが、5分か、せいぜい10分くらいだろう。

駐車場まで駆け降りると、自分の車の運転席に座り、ハンドルに両手を載せ、その上に顔を伏せ、目を閉じていた。

少し落ち着いた気がしたので、ゆっくりと目を開き、顔を上げた。

私は何も見ていない。そもそも、私が動揺する事自体、おかしいんだよ。

少し前まで、塚本さんに彼女はいなかったから、さっきのは、どちらかが『告白』したんじゃないかな?

私が見た雰囲気からすると、白石さんからって感じ。