野球大会の受付を、一番上にある球場の前でしているそうで、尚子さんと上を目指す。

緩やかな斜面は、時折階段になっている。

「休みなのに、いつもより早起きしちゃったよ」

欠伸した口元に、手を当てる尚子さん。

「だねぇ。ちょっと、寝不足かも」

寝不足なのは、塚本さんのせいだけど。

朝の日差しが、目に染みる。

なんとなくぼんやりしながら、尚子さんと歩く。

すると、不意に後ろから、右肩に掛けていたクーラーボックスの肩紐を引っ張られる。

「っ!」

少しよろけながら振り向くと、塚本さんがクーラーボックスの肩紐を握っていた。

「持つよ」

「大丈夫です!」

できるだけ視界に入れないようにしていたのに、張本人が、いきなり目の前に現れた!

「さっき振らついてた。危ないから、俺が持つ」

「振らついたのは、急に塚本さんが引っ張るからです。塚本さん、バットケースを持ってるじゃないですか。私は手ぶらなんで、私が持ちます!」