「わかった。遅刻するなよ!」

「了解です!」

額に右手を当て、敬礼のポーズをした。


「塚本さんも今日は、早目に帰った方がいいですよ。お先に失礼します!」

ニッコリ笑って、軽く頭を下げる。

「そうだな。気を付けて!」

塚本さんは穏やかに笑って、右手を上げた。

2人してそれぞれの進行方向に振り向いたが、すぐに塚本さんに呼び止められた。

「水野君、肩にゴミ!」

もう一度振り向くと、塚本さんに近い方の私の右肩を、塚本さんが指差している。

「えっ!?」と、右肩を少し下げ、首を捻って肩に付いているゴミを探す。

私は、“ バカ ” なんだろう。

火曜日、塚本さんから “ 突風 ” が吹いて以降、私はかなり警戒しながら塚本さんに接していた。

塚本さんの方は、私の警戒っぷりに、何度か苦笑を見せたものの、何を言われる事もなく、普段通りの『穏やかで優しい塚本さん』だった

私達のそんな様子に、周りは「いつもの兄妹ゲンカか」くらいにしか見ていないようで、特に突っ込まれる事もなく。