キスの意味

思わず顔を上げると、いつもの穏やかな笑みを浮かべた塚本さんと目が合う。

私は、妙な罪悪感をもってしまった。

自分から狙った訳ではないといえ、私は、塚本さんのとてもプライベートな部分を知っている。

さっきの塚本さんに対する、ちょっと失礼な発言への後悔もある。

変にごまかしたりせずに、塚本さんには、きちんと話そうと思ってしまった。

「デートをするような相手は、今はいません。だから、この本屋さんにも、いつも一人で来ます」

そう言うと、肩を竦めて薄く笑った。

「『今は』て事は、前はいたんだ」

「っ!」

そこ、突っ込みますか?
あ~!言葉選びを間違えました。

短く溜め息を吐くと、意を決する。

「前に、県外で働いてた事は話しましたよね?」

塚本さんが小さく頷く。