さよならさんかくまたきてしかく

きょうは決戦の日なのだ。どうしてかはわからない。けど何故かきょう言わなければ、不意にそう思った。男らしい性格だねとよく言われる。髪の毛はショートだし名前も小野田あさひ、なんて少し男っぽいかもしれない。
けどどんなに男らしいと言われようが所詮は女なのだ。

あさひ、まだ?

ポンとスマホの画面に現れたその文字は幼馴染みの夏芽から送られたものだ。なつめ、こちらは私と違って可愛らしい名前だけど烈輝とした男。そしてきょうの対戦相手、なのだ。

「夏芽!ごめん。待った?」
「すげー待った」
「ごめんごめんー」
「で?用って何よ」

話があるんなら帰りにすればいいのにーと夏芽はめんどくさそうに呟いているがそんな訳にはいかない。だって、学校の帰りだったら杏姫も奏多もいるじゃないか。

「あのね、わたし夏芽のことがすきなんだけど」
「え…?」
「あ、ごめん。今更過ぎだし気持ちわるいよね」
「う、いや気持ち悪いとかじゃなくて、おれ、杏姫がすき…なんだ」

杏姫がすき。その言葉が頭にぐるぐると響く。杏姫がすきなんだ。大好きな人の大すきな声でこれまた大すきな幼馴染みのことがすきだと聞かされる。理解ができない?ううん、できてる。わたしは夏芽のことがすきで夏芽は杏姫のことがすき。うん、理解は完璧。じゃなくて、

「うん、ごめんね。わたしなんか、ね」
「あさひのこともすきだよ。でもそれは…」
「わかってる。わたしたちは幼馴染み!でしょ」
「…ごめん」

きょうは一緒に帰れないかも、そう自分勝手に言い残して教室へ戻ろうとしたけど胸の奥がなんだか棒で抉られているようにどろどろぐしゃぐしゃしてそのまま行くあてもなくふらふら歩いた末たどり着いた先はやっぱり大すきな幼馴染の内の1人、奏多なのだ。