(完)ずっと君といれるなら 〜再会〜

「んっ…。」

長いまつ毛を震わせ咲絢さんはやっと目を開いた。

「だっ大丈夫ですかっ？すみませんっ‼︎私のせいでっ‼︎」

必死に謝る私を不思議そうに眺めていた咲絢さんは記憶をたどるように目線を上に向け手を額においた。

「ああ…。いいのよ。葉月ちゃんのせいじゃないわ。逆に気づかせてくれたありがとう。」

思い出したように頷きながら微笑んだ。

「じゃあ…どうするんですか？気持ちは…。」

「伝えないわ。私のことだから間違いなく失敗するもの。叶わない夢は見ないわ。」

ばっさりとそう言い捨てた咲絢さん。

「さあ。心配かけてごめんなさいね。試合はどうなっているの？」

「…。」

「葉月ちゃん？」

「…らしくないです。」

「え？」

「咲絢さんなら絶対何があってもぶつかって行きます！何か過去にあったんですか？」

「…さすが葉月ちゃんね。恋愛ほど厄介なものはないと思うの。私。」

咲絢さんは過去を思い出すようにそう呟いた。

「なんで…。」

「私には中学生の時たった1人友達がいた。優しくて思いやりがあって。
大好きだったわ。
だけど、私、彼女の好きな人に告白されてしまったの。
その噂は簡単に広まった。
彼女の好きな人は人気のある方だったから。
でも、フったから心配ないって、彼女を信じてた。
だけど、裏切られた。
私は学校中の女子から目の敵にされ、それからずっと過酷な嫌がらせを受けたわ。
女神のように優しかった彼女を醜い悪魔に変えたのは恋愛感情よ。
恋愛を人は幸せと語るけど、恋愛に傷つけられた人だって少なくない。
私は恋愛なんてしないって決めたの。」

始めて咲絢さんがまともに喋っている姿を見た。

驚いて、口を開けたままにしていると咲絢さんはフッと微笑んで言った。

「本当はあんなキャラじゃないの。
ああいう風に性格を偽ってたら誰も近寄ってこなかったから。
さあ、この話は忘れましょう。」