梶君の、少し温かい掌が私の両手をふわりと覆う。
体温はお互い同じくらいで、体感温度は変わらないはずなのに、胸の奥がなんだかぽかぽかした。


「えへへへ」


「何にやけてんのー」


「なんでもなーいー」


次はにやけ顔を押さえずに、一階への階段を下りた。


「四月でもまだ寒いんだねー、もうマフラーしまっちゃったよ」


「私が梶君のマフラーになってあげようか」


「43キロを首に巻いたら、俺の首が折れますがな」


「体重明かさないでよろしい!!!」


寒さで赤くなった梶君の鼻をぎゅむっと摘まむ。
いたいいたい、と笑う梶君は、心の底から嫌がっていないことを私は知ってる。



右手の中指の傷は、一昨日お家のお手伝いの時に包丁で切っちゃって。


左足首も、梶君は気付いてないかもしれないけど、今日のバスケでのフリースローで痛めちゃってる。


赤い頬は、怪我じゃなくて、私のことを思ってくれてる。



(好き、大好き、大好き、大好き)


梶日向君、あなたのことが、心の底から大好きです。



「梶君、大好きだよ!」


「俺も、大好き!」



ごめんね、君と私の好きはきっと、違う