「かっじくーん、かーえりーましょー!」


私は二組のドアを大きく開けて、教室を覗き込む。
一番後ろの、窓際の席。


私の愛しの恋人、梶日向君がこちらに気付く。


「内間!ち、ちょっと待ってて!」


「うん!待ってる!」


私を瞳に映した瞬間、花が咲いたように笑顔になる梶君。
可愛い、可愛い、可愛いなあ。
思わずにやける頬を、冷たい両手で押さえる。


「雛ちゃん何ニヤニヤしてんのー?」


「やっほー梨奈ちゃーん!今から梶君と帰るのー」


小学校から仲のいい加藤梨奈ちゃんとハイタッチを交わし、両手を口の前に持ってくる。


息を吐けば白くなって、まだ冬だということを実感する。


「内間!ごめん、待たせた」


「本当だよー待ったよー」


「ごめんごめん、寒かったよね」