部屋に一人でいると…
「雅ー!!」
「椿、舜…!?何で椿が?」
「舜に聞いたよ!一緒に住んでたんだね!」
「そうじゃなくて…私、言ったよね?けがさせたくないから一人にしてって…!」
「うん言ってたよ!でもね、けがなんかより雅と一緒にいれないほうが痛いの…心がね!」
こうして、一緒にいてくれることになった二人。話をして椿は一人で家に帰った。


はずだった…
ブーブーケータイが鳴った。
「はい?」
「よお、雅近づくなって言ったのにあいつら雅に近づいたみたいだな。だから、一緒にいた可愛い女の子預からしてもらったよ。返してほしかったらあの倉庫に来い。いいな!」
「可愛い女の子…?もしかして椿…?」
「あーそうだ。早く来いよ。」
ツーツーツー
「雅?」
「舜…椿が誘拐された…浩人に…」
「えっ?…俺も一緒に行く。場所は?」
「浩人が使ってる倉庫…ここから歩いて1時間くらい…。」
「じゃあ自転車で40分かからないな。雅急ご!」
「えっ?うん…!」
私は初めて舜を頼もしいと思った。
舜の運転する自転車に私もまたがり、倉庫にたどり着いた。
「雅、遅かったじゃねーか。」
「椿はどこ?」
「あっ?それは雅次第だな。」
「何が目的?」
「俺と付き合え。」
「…それは出来ない」
「んだと?だったら、椿も返せねーな。」
「椿は関係ないでしょ?早く返して。」
「関係あるな。俺の忠告を無視しやがった。」
「何よそれ。何様のつもりなの?私は優しかった浩人が好きだったの。どうしてそんな風になってしまったの?」
「…。」
高橋浩人…頭のいいエリート一家で何も不自由なく育った。そんな家でも俺の頭のよさはダントツだった。とても優しいちょっと天然な母、厳格だが普段は優しい父、しっかり者の姉との4人暮らし。誰もが羨む理想の家庭だった。母さんが病気で亡くなるまでは…。
「雅ちゃん俺から話すよ」
「司さん…」
「中2の夏…浩人のお母さんが亡くなったんだ…」
「えっ?」
あの優しかったおばさんが?
「そこからは浩人もどうしていいかわからずただひたすら、暴れてたよ。特にもう誰も失いたくないから雅ちゃんのことが好きな人を追い払ってたよ…!」
何よそれ…!
「どうして…!?どうして暴れる前に私に言ってくれなかったの?…何でこんなこと…。」
「…。言えるわけないだろ。おふくろが病気で亡くなった後、姉ちゃんは高校卒業してすぐに家を出だし…おやじはショックで病院に入院して今も治療中だ…こんなこと両親をほとんど知らない雅に言えないだろ…」
「…そうね。両親が亡くなっても何も感じなかった私にそんな相談されても何もわかってあげられないわね…」
「だからって雅に友達を作るななんて間違ってるよ!幸せを知らない雅に幸せになってもらおうとは思わなかったわけ?あんたが雅を更に不幸にしてどうするんだよ!!椿を誘拐するのも間違ってる。自分の闇に他人を巻き込むな!俺だって母さん病気で亡くしたよ。でも俺はそんな風にはならなかった!医者になって病気の人を救いたいって思ったよ!自分だけが不幸だなんて思うな!」
「はぁ…お前話し長げーな。雅は幸せなんて知る必要はない。大切な人を失う悲しみ雅は味あわなくていい。」
「何だよそれ。だったら俺が雅を幸せにする!雅より先には絶対に死なない!雅には笑ってほしいんだ。」
舜…。
「あっ?何偉そうなこと言ってるんだ、てめぇ…!」
「浩人もうやめて!!」
もう…やめて…!
「雅、お前そんな大きな声…しかも泣けるようになったのか?!ていうことは…失ないたくない気持ち覚えちまったんだな…余計なこと覚えさせやがって…!たく…司、あの子連れてきてくれ。」
「良いのか?浩人…!」
「あぁ。俺たちの負けのようだ。悲しい顔一つ出来なかった雅を泣かせるようにするなんてな…」
「そうか。俺は浩人に着いていくよ。」

「雅ー!!」
「?!椿!ごめんね…!巻き込んでしまって…!」
「ううん、助けに来てくれてありがと!解決したみたいだね!」
「えぇ、舜ありがとう…!」
「じゃあ、俺たちは行くわ。元気でな。雅。」
「えぇ、浩人…司さんも。」

こうして無事に誘拐事件は幕を閉じた。