「そうですか?私は、あまり好きじゃありませんけど」
この名前までもが私を縛る。
あの家の一族だってことを。
嫌でもつきまとう、名前。
私の一家の女の人は、みんな名前の最後に“り”がつく。
母は、さおり。
姉は、みおり。
妹は、しおり。
私は、自分の名前が嫌い。
「優しくて、一緒にいるとポカポカする鈴木さんらしい名前だよ」
そう言うと、私の頭をなでた。
また、ドキドキし始める心臓。
顔に熱が集まっている。
これ以上、ここにいたら心臓が壊れそう。
顔が赤いのだって、バレたら………。
「ありがとうございます。このあと用があるので、一足先に帰宅します。」
ぺこっと頭を下げて、社長室を出た。

