パーティが始まったら、愛想よく振る舞って、頃合いを見計らって帰ればいい。
『明日も仕事があるから』とか口実を作ってさっさと帰らないと。
頭の中は“早く帰りたい”という言葉で溢れている。
ロビーのソファーに座っていると、
「鈴木さまのお嬢様じゃありませんか!」
若くて、見るからに高そうな腕時計をつけている男性に声を掛けられた。
にこにこ好意的な笑顔を浮かべている。
『またか……』と私は心の中でため息をつく。
パーティなんかに出ると、若い男性に声を掛けられる。
いわゆる、ナンパ。
私の家は田舎に広大な土地を所有し、財産だって半端な額じゃない。
そういう家の娘を口説いて、うまく交際に発展させ、あわよくば結婚なんて考えているのだ。
世間知らずのお金持ちのお嬢様なら、簡単に落とせるとでも思っているんだろう。
要は財産目当て。
いちいち面倒だ。
「すみません、お手洗いへ行きたいので。お話はまたの機会に。」
うまくその場から逃げた。
本当の私を好きになってくれる人なんて、いないもの。
みんな私の家のお金目的なんだから。

