しばらくすると黒い車が来た。 私の目の前に止まると、運転席から男性が出てきた。 「ひより様ですね?お迎えに参りました。」 30代くらいのスーツを着た男性が言った。 後部座席のドアを開けてくれて、私は座席へ座った。 この車は、いわば地獄行き。 なるべく早く帰ろうっと。 車窓の景色をぼんやり眺めた。 去りゆく物をただ、視界に捉えるだけだった。