「サンドイッチとトースト、どっちがいい?」

「メシ」

「……めし?」

「ご飯、食いたい。あと魚。焼き魚食べたい」

「……焼き魚定食、ってヤツ?」

「そう、それ。それがイイ」


 何の悪気もなく、彼は言いのけた。

『milky way』はカフェなんだけど。

 そんな言い訳、この常連客には通じない。

 というよりも。

『milky way』には、店長の僕ですら把握できないくらいのメニュー、所謂『裏メニュー』が存在している。

 毎日毎日やってきてくれる彼らの為に、時々適当なものを出していた。そうしたらいつの間にか「リクエストすれば何でも出てくる」みたいな、有り難いんだか有り難くないんだかよく分からないシステムが出来上がってしまった。

 時々妙なものをリクエストされることもあるけど、料理は好きだし、milky wayの新メニューになったりもするから結構楽しいんだよね。

 確か冷凍庫に冷凍したサバがあって……厨房には昨晩シズルくんが作ったらしい味噌汁が置いてある。

 自画自賛したいくらいあっという間に「焼き魚定食」を準備して、アルゼフの前に差し出した。