「二人ともお疲れさま」

「あ。シンヤさん、お邪魔します」

「こんばんは」


 カウンターに座るハルキくんとヒサギくんにお茶を出しながら、僕は尋ねた。


「仕事お疲れ様。お腹空いたよね? ビーフカレーとオムライスとナポリタンなら直ぐに出来るよ」

「じゃあ、俺はカレーとナポリタンで」

「ハル、そんなに食うのか?」


 こんな時間にどんだけ食うんだよ、とアルゼフが顔を引きつらせた。


「今日は忙しくてお昼の後休憩取れなかったんだよー。腹減りすぎてクラクラする」


 ナチュラルハイ気味なハルキくんの隣で、ヒサギくんは眠そうにしている。


「ヒサギくん、大丈夫? 夜食どうする?」

「……いらない」


 その声は決して大きいものじゃなかったのに。

 アルゼフと話し込んでいるとばかり思っていたハルキくんがくるりと向き直って、今にもカウンターに突っ伏しそうなヒサギくんの肩を引いた。


「何だよ」

「ヒサギちゃん、昼だってまともに食べてないんだから何か食べなきゃ駄目だよ」

「煩ぇな。帰ったら食うよ」

「食べるって云ってもどうせ桃缶でしょ。栄養の偏りは良くないって」

「安心なさい。倒れたらアタシが看病して、ア・ゲ・ル」

「ウゼェ。話し掛けんな。2度とウチに来んな」


 ヒサギくんに冷たく一刀両断された二人は負けじと口々に文句を言い始めるが、何一つ彼には届いていないみたいだ。

 みんな、彼のことが心配で云っている(のだと僕は信じている)んだから、少しは聞く耳を持っても良いんじゃないかな。