milky wayの閉店時間は二十二時。

 そして現在二十三時。

 店には僕とシズルくんと、二十時頃から来ているアルゼフの三人。

 ホールの掃除を終えたシズルくんは、カウンターに座ってつまらなそうに時計を見ていた。


「今日はありがとう。助かったよ」


 云いながら僕は、シズルくんの目の前に作ったばかりのコンソメスープを差し出す。


「いいわよ、そんなお礼云われる程のことじゃないもの。それに、夜にはここに来るつもりだったし」


 隣にアルゼフが居るというのに、気付けばずっと、二人は言葉を交わしていない。珍しいこともあるもんだ。

 そんな風に思いながら店の外に目をやると、美容院はまだ煌々と明かりが点いている。時々見える人影に、ヒサギくんやハルキくんらしきものは見あたらない。


「シンヤ、俺もそれ欲しい」

「三百円ね」

「うっそ、金取るの!?」

「ここはお店だからね」

「じゃあ要らなーい」


 何杯目か分からないコーラを飲んで、アルゼフは伸びをした。

 閉店後は扉に「CLOSE」のプレートを掲げてはいるものの、鍵までは掛かっていない。

 中に僕が居ると分かると、常連達は遠慮無くその扉を開けて入ってくる。

 この店にいる一日で最も気が安らぐ時間かもしれない。

 そう思えるのも、アルゼフやシズルくんを始め、ここに遊びに来てくれるみんなのお陰だ。