「お昼、何食べる?」

「んー、パスタお願いします。ヒサギちゃんには、リゾットかな」


 完全に眠ってしまっているヒサギくんに、ハルキ君が自分の上着をそっと掛ける。

 そういう心遣いは微笑ましく思うけど。彼が抱える下心を知ってしまってからは、どうしても……見て見ぬ振りをしてしまう。

 僕は、僕が思っている以上に顔に出やすいタイプらしいからね。

 ただでさえ険しい道程を僕なんかが邪魔してしまっては悪いし。

 同性の恋愛に偏見とかは無いけれど、それでも理解しかねる部分も少なからずあるので……。

 果たして、彼の想いが通じる日は来るのだろうか。

 でも確か、二人には彼女がいたような……。

 うーん、何だかよく分からない。

 二人を見ていて分かるのは、ハルキくんがヒサギくんを構うのと同じくらい、ヒサギくんも彼を頼っている(時もある)ということ。

 友達なんだから当たり前か。

 僕も昔は親友に色々任せきりだったしね。

 けど、喧嘩してハルキくんを殴る時のヒサギくんの顔は感情の欠片すら存在していなくて。

 何だか、ハルキくんの想いが報われる日なんてものは永遠に来ないんじゃないか、って思ってしまう。

 でも、どんなカタチであれ、幸せであればそれでいいと思う。

 大きな、揺るぎない幸せなんかよりも、見逃してしまいそうな位小さな幸せが幾つかあれば、それで良いと僕は思う。